資金調達後に問題になる「みなし配当」という落とし穴

会社は資金調達をしただけで目標を達成できるわけではありません。資金調達をすることで株主に対する説明責任も発生しますし、事業計画を達成するために調達した資金を投資して会社を成長させる必要があります。

ただ、投資して頂いたエンジェル投資家などの少数株主と馬が合わずに、（少数株主が会社から離れることになれば）少数株主が保有している株式をどうするか、という問題が発生することがあります。

少数株主が持っている株式の譲渡先が見つからず、創業者が取得できるような株価であるならば大きな問題にはならないのですが、株価が大きくなりすぎて創業者の資力では取得できないことも現実にあります。

創業者が会社の株式を買い戻せないときには、創業者に代わって会社が買い戻すという選択もありますが、その際に当初は予想だにしなかった「みなし配当」が発生することがあります。

みなし配当とは？

みなし配当とは、（株式を会社に売却したときなど）投資した会社から金銭等の交付を受けた場合、その合計額が、会社の資本金等の額のうち、その会社の資本金等の額を超えるときは、その超える部分の金額は、配当等の額とみなすものです。

株式投資をしていると上場企業から配当を受け取ると思いますが、この配当は純粋な配当と言えます。

しかし、株式を会社に譲渡して会社から金銭を受け取った場合など、純粋な配当ではないけれど、実質的に配当と同一視できるときがあります。これがみなし配当と言われるものです。

個人株主が、みなし配当を受け取ったとされた場合には、「配当所得」として最高税率45％の総合課税の対象となってしまいますし、株主が法人である場合には、受取配当等の益金不算入の規定が適用されることになります。

みなし配当を受け取った株主が個人の場合には、最高税率45％も課税されてしまいますので、株主にとっては想定外の課税となるのではないかと思います。

みなし配当の具体例

「みなし配当」は簡単には理解できないと思いますので、具体的な数値を使って、みなし配当について確認します。

細かい数字までは理解する必要はありませんが、余裕があればイメージだけ掴んでおきましょう。興味のない方は飛ばしてください。

みなし配当の金額が小さければ多少の納税で済みますが、億単位になりますと重い納税の負担を背負うことになってしまいます。

税務について馴れていないと「みなし配当」については見落としやすい点ですが、後で想定外の課税を避けるためにも「みなし配当」については頭の片隅に置いておいても損はないと思います。