日本政策金融公庫からの融資を一括返済せざるを得ない10のケース

日本政策金融公庫からの融資に限らず、金融機関からの借入金は、(金融機関から配布された)返済予定表に基づいて返済するのが大原則です。

ただ経営者のなかには「いったん借りてしまえば、こっちのもの」と言わんばかりに、好き勝手な振る舞いをする方もいるようです。

日本政策金融公庫を含めた、金融機関からの借入は金銭消費貸借契約という契約に基づいて融資を受けているので、契約違反があった場合にはペナルティーがあることは当然です。

そのペナルティーとして代表的なものは、債務者(会社)が期限の利益(※1)を失い、借入金を一括返済することでしょう。

※1 期限の利益の意味については、リンク先の記事で説明しています。

期限の利益とは?期限の利益の喪失で銀行借入は一括返済へ

ここでは、日本政策金融公庫が使用している契約書を一部抜粋して、どのような場合に借入金を一括返済しなければならないのかについて初心者向けに解説します。

日本政策金融公庫からの融資を一括返済せざるを得ない10のケース

日本政策金融公庫からの融資については、借入金を一括返済しなければならないケースについて契約書上明示されています。どのようなときに一括返済しなければならないのか、ある借入金の契約書を基に、そのケースについて1つづつ簡単に説明します。

(1)借主が支払を停止したとき、借主に破産手続開始、民事再生手続開始もしくは会社更生手続開始の申立があったとき、または借主が清算に入ったとき。

この支払停止について簡単に説明すると、支払停止とは、債務者に支払能力がなくなり、債務の支払ができないことを債務者が周囲に示すことです。

支払停止や、破産手続きなどが開始した場合には、一括返済することになりますが、債務者がこうした状態になっていると借入金を全額弁済する資金ないというのが現実です。

(2)借主が手形交換所の取引停止処分を受けたとき。

そもそも手形交換所を利用している会社等は、ほとんどないのが現状だと思います。

(3)借主が住所変更の届出を怠るなど借主の責めに帰すべき事由によって、公庫において借主の所在が明らかでなくなったとき。

公庫側が、借主の所在を把握できない場合には、両者の信頼関係は破壊したと言えます。信頼関係が破壊した以上、一括弁済を請求するのは当然でしょう。

(4)借主が本借入金債務その他公庫に対する債務のいずれかを期限に弁済しなかったとき。

返済予定表通りに返済できない、具体的には、会社が指定した口座から元利金の返済引落ができなかった場合には、引落できなかった時点で、契約に違反したことになってしまいます。

こうした状況も一括返済の要因になります。

(5)借主に仮差押、差押もしくは競売手続の開始があったとき、または借主が租税公課を滞納して保全差押を受けたとき。

仮差押や、差押など強制執行の準備段階に入った以上、債務者(会社)の信用は棄損しているので、一括返済しなければならないことになります。

ただこの段階では、債務者に一括返済する資金はないはずです。

仮差押などは、債務者に気づかれないように手続きを進めるのが通常ですので、借入金以外に未払い債務もあり、債権者との関係が良好とは言えない場合には、債務者は仮差押えの可能性があることは知っておきた方が良いと思います。

仮差押えは、債務者の知らない間に進行していきます。

(6)借主が本借入の前後を問わず公庫に対し、不実の申し出もしくは報告をし、または必要な事実の申し出もしくは報告を怠ったとき。

日本政策金融公庫に対して、不実の申し出や報告をした場合にも、金融機関側と会社との信頼関係が破壊されますので、「基本的には」一括返済の対象となります。

ただ(6)から、以下で説明する(10)までに該当した場合には、公庫側からの請求によって一括返済することになります。

反対に、(1)から(5)までの事由に該当した場合には、日本政策金融公庫からの請求がなくとも、(契約上は)当然、一括返済をすることになります。

(7)借主が本借入金を公庫が認めた資金使途以外に使用したとき、または借入後長期にわたり使用しなかったとき。

融資は、例えば設備投資や開業資金など、資金が必要な目的があった場合に限り、融資が実行されます。もちろん、借り入れた資金を「何に使うか」も融資審査の対象で、借入金の使用使途が不明確な場合には融資は実行されません。

借入れた資金を、公庫に説明した内容と違う目的で使用した場合にも、不実の申し出をしたことになるので、基本的には一括返済の対象になります。

(8)借主または連帯保証人が本契約の一にでも違反したとき。

債務者や連帯保証人が日本政策金融公庫との間の契約に違反した場合には、一括返済の対象になります。

(9)連帯保証人が 上記(1)から(5)までのいずれかに該当したとき。

連帯保証人が上記(1)から(5)までの1つにでも該当したときも、会社は借入金残額を一括返済する必要があります。

(10)公庫がその他債権保全を必要とする相当の事由が生じたと判断したとき。

これはザックリとした包括規定です。各々の状況に応じて、一括弁済を請求するかどうか公庫側で判断することになりますが、基本的にこの規定が発動されることは少ないはず。

ただ相当悪質な会社に対しては、この規定を根拠として一括返済を迫ることもあるようです。

(1)から(10)までをご紹介しましたが、これ以外に、借主や連帯保証人が反社会的勢力に該当したときという項目もあり、借主等が反社会的勢力に該当することが判明した場合にも一括返済することになります。時勢を考えれば、これは当然と言えます。

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