創業融資においては、創業計画書と事業計画書の2つを提出する必要があることもあります。例えば、日本政策金融公庫に中小企業経営力強化資金という融資制度に融資を申込むときです。
ただ創業融資でも、創業計画書だけを提出すれば良いときもあります。保証協会付き融資のときは基本的には、創業計画書だけでOKです。
そこで今回は、事業計画書との違いを意識した創業計画書の作り方についてお伝えします。
事業計画書と創業計画書の違い
事業計画書は、資金調達において様々な場面で銀行などに提出することが求められます。銀行への追加融資のときにはもちろん、ベンチャーキャピタルからの資金調達の際や、エンジェルからの資金調達のときなどにも提出し、資金を提供する側に対してその内容を説明することが求められます。
そして基本的には、事業計画は今後5年の予定損益(予定P/L)を作成することが一般的です。
創業計画書は、簡単に言うと、事業計画書の簡易版です。
事業計画書は、今後5年間の予定損益(予定P/L)等を作成するのに対して、創業計画書は今後1年間の予定P/L等を作成することが一般的です。
日本政策金融公庫に提出する創業計画書も、保証協会付き融資の際に提出する創業計画書も今後1年間の予定P/Lの作成が求められています(※)。
※ 日本政策金融公庫でも、保証協会でも、創業計画書のフォーマットを用意していて、いずれのwebサイトからもダウンロードできます。
もちろん、予定P/Lだけではなく、創業の動機や経営者の略歴等の記入も必須です。
創業までの実績と経験
創業後に営む予定の事業についての経験があることが重要で、さらにその事業での実績があれば、かなり融資審査上は有利になります。
ですので、事業経験と実績を創業計画書でアピールすることは大切です。
繰り返しになりますが、創業予定者は経営者としての経験・実績は(基本的に)無いので、経営者としての実績をアピールできない分、創業までの事業経験と実績をアピールすることが融資を受けるポイントです。
簡単な例を挙げるとすれば、例えば、創業後に飲食業を開始する予定ならば、創業前は外食産業でキャリアを積んで、しかも実績がアピールすることがポイントになります。
その業界の経験がないと勘が働きませんし、その業界について知識・情報不足だと決定的に不利になります。不利になれば、事業で実績が上がらずに資金繰りが厳しくなり、借りれの返済にも影響が生じてしまいます。
創業計画書では事業経験や、実績をアピールすることが本当に大切。
自己資金の存在
創業融資については、きっちりと自己資金を準備することも必須です。
確かに、融資の要件によっては「自己資金が必要」とまでは明記されていない融資制度もあることは事実です。
しかし、形式的には自己資金要件は求められていなくても、実質的に創業融資を受けるときには自己資金の用意は必要条件と考えてまず間違いない。
しかもこの自己資金が準備できていることを、金融機関側に通帳などで証明する必要もあります。
さらに、自己資金をどのように準備したかもアピールすることも大切です。理想としては、計画的に資金を貯めていたことをアピールできればOKです。
コツコツと自己資金を準備した履歴を通帳から確認できないならば、見せ金ととられる可能性もあります。
堅実な創業計画(損益計画)の作成
既に過去の事業実績があるならば、その過去の実績値と整合性のあるように事業計画書を作成する必要があります。過去、現在、未来は繋がっていますので、将来の事業計画は過去の実績に基づいて作成する必要があるのは当然です。
技術革新等でもないかぎり、人が突然変異することが稀であることと同様に、会社も突然変異はしないもの。
創業の場合には、過去の実績がないので、過去の実績と整合性を図ることはできないのですが、強気すぎる創業計画書を作成するのは回避すべきです。
極端な例を言えば、創業計画書で1年後の売上高を1億円としていた場合に、実際の売上高が100万円だったときには、会社(経営者)はかなり信用を失ってしまい、追加融資など、その後の取引ではかなり不利益を被ります。
創業融資を受けたいがために、かなり見栄えの良い創業計画書を作成する経営者がいらっしゃるのは事実です。実績が計画値をあまりにも下回ると、経営者はその後信用を失ってしまい、中長期的に不利な立場になってしまいますので、創業計画書(予定P/L)の作り方は専門家などのアドバイスを受けた方が良いと思います。
事業計画書との違いを踏まえた創業計画書の作成まとめ
創業計画書は事業計画書の簡易版という点で、両者は類似しています。
ただ創業融資の際に提出する創業計画書は、創業ならではのアピールポイントと注意ポイントがあります。
その点を外さずに創業計画書を作成すれば、融資の確率は格段に上がるはずです。